北風、太陽 新しい音/水町綜助
 
くらい
 今日、吹いて
 囁きなんかしない
 怒りもせず
 笑いもせず
 すべて吹き飛ばしている

 警備員さんが言った
 月島は風との闘いだ
 と笑って
 めちゃくちゃな光に
 白い反射光に
 目深な帽子のつばの下
 深く皺に陰影を作りながら
 ぼくも笑って
 よくわからないけれども
 今朝食べようとして
 食べられなかった
 菓子パンのことなど話して
 会話の途切れた余韻の中
 夏という季節が
 とおく線上より
 冬に反射光を送っているすがたを
 空想していた
 そんななかも風は
 新月陸橋から
 いま二手に分かれて
 ビルというビルに手当
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