北風、太陽 新しい音/水町綜助
 
 ニワトリ小屋の扉を開けて
 射し込む朝焼けの光に
 山吹色にかがやく
 あたたかな藁をもちあげ
 あるか
 ないか
 たまごが

 のぞきこむような気持ちで
 布団から起きあがる
 飼ったことないけど


  朝

 まだ掻き回されてない空気があり
 発せられていない言葉がある
 昨夜の音は
 終わりがけに不意に吹き始めた冬の突風に
 よりさえざえと鋭角をもたされ
 空洞を持つ樹脂製の
 ちょうど最後の授業の終わりに机から
 ペンケースを落としてしまったような
 音を立てて落ちた
 それはもうごつごつと痛いので
 水を飲みにも行かれないと眠った
[次のページ]
戻る   Point(12)