/宮川
 
平日の朝
車をはしらせている
彼女は運転免許をもっていないためにあなたに別れを告げられたという話や
小さい頃に処方されたシロップの味を思い出しながら
本調子でない頭を冬と春のあいだの空気に突っ込んで
サシェの香りを胸にいきわたらせる
彼女は可哀相だ

ポケットのなかやスープ皿のなかはいつも混沌としていて何もみつからない
あなたの眼窩は混沌としていなくて何もみつからない
うかつにも視線をそこに留めてしまったら
意味のあることや無いことや私が生まれた経緯だとかを話題にして逃げる
浅いか深いか
どちらにしても
私は私の生活に集中していればいい筈だ
今月中には部屋に仏画を飾る
とびきりハッピーなやつを

いとしい人なんてどこにもいない
ビタミンCを摂り過ぎて肌が白い
血圧が低い
五本指靴下がいい
セサミンについて 
と書きつけた付箋が剥がれそうなので撫でて
溜息をつく 
ガソリンが残り少ない



戻る   Point(1)