たましい/Utakata
すれ違う人たちの
魂の先端を少しずつ摘み取ってはポケットに入れる
ひっそりとした動きなので
たいていの人はすれ違っても何も気付かない
ときどき
けげんな顔をして立ち止まり
胸の辺りに手を当てたり
空をちょっと見上げたりする人がいる
たいてい
不思議そうな顔をしたまま
人ごみに押されてどこかへ消えていく
なにしろたくさんの人がいるので
ポケットの中には摘み取られた魂ですぐにいっぱいになる
指先で触れると
それらは硝子の欠片のような透明で澄んだ音を立てる
小さな音なので
たいていは人々の足音にすぐにかき消されてしまう
結局のところ
ただの先っぽに
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