バンドネオン/角田寿星
 

レクエルド。
砂時計が音もなくなだれを成して舞い墜ちる
夜にあなたは迷いこんできたちいさな銀河を
手のひらでつつむように抱きとめる 葉脈を
透かしてみえる地球の裏側では生れながらに
しろい瞳のマリーアが影のまま生きつづけた
腰かけた椅子がわずかに浮きあがりそれでも
なお部屋に壁は在り床が在って誰も知らない
ラピュタがゆるやかな光芒をはなつ雲の濃淡
垣間見えるのはおそらくあなた 忘れられた
歌をうたう バンドネオンのはじまりだった

ハカランダ。
水のにおいがする波の音がきこえる日だまり
にたたなずむギターのように古い三階建ての
事務所あなたは仕事でいそがしく窓をあ
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