ふたりのはこぶね/あすくれかおす
久しぶりに、雨が降っている。
冬の冷たい雨は、無口なのに妙に音が響いて、私たちはいつも黙ってしまう。
二人は、何の変哲もない夫婦である。
面白いことと面倒くさいことが順繰りにやってきたり、許せないこともたまたま許せたりして、いつのまにか結婚して、そのまま一緒にいる。
夫は夕飯をもく、もくと、そのままの擬音で食べている。
私はソファからそちらの方向を眺めているのだが、何だかぼんやりしてしまって、夫を眺めているのか、その後ろのベランダを眺めているのかピントが合わない。
こんな冬の雨の日は、いつだって焦点がぼやける。
だからなのか、反対に音は冴えていて、目がよく
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