みずたまり/船田 仰
伸びた髪にそよ風は阻まれ
わたしはまだ暑い
みずたまりの波紋が言い訳におもえて
それでも挨拶をおもいだせない
朝でも昼でもないこのとき
傘をもって闊歩する人間の
足音はここまでとどくはずもない
五階から地上まで滑り台にのって
視線だけ、信号をしんじているんだ
一人ずつカプセルに入っているもんだから
集合体になって無言の曇り空
立ちくらみがして
わたしはみずたまりに落っこちそうだ
二次元の独り言だから
夜になっても起き上がってくれない
電気は映えて足音は聞こえても
地下鉄ほど切なく風はふかない
曇ってるから
依然としてきみが必要だった
ただ青いままで
信号は待ってくれないよ
よわい右腕をかざしたら
空がひとりっきりでふりむいたのに
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