鍵穴/よしおかさくら
 
鍵穴から注がれる
細やかで執拗な視線に
いつまでも見つめられていたくて
わたしは部屋を出なかった
魅力的な、傾いたものへの憧れで
まとめて深い息をつく
……幼い頃、誤って内側から鍵を掛け
心のなか 聞き覚えの無い声に
囁かれたことがあった
《鍵を開けるな》
ドアの外で母が
わたしを気遣う気配を感じながら
ドアノブに触れるまでの間を楽しんだのだった

あなたはわたしの指先が
空を弾くのを見ただろうか
それから
あなたは見ただろうか
無意識ではありえない緩やかさで
わたしがシーツに横たわるのを
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