ひだまりつつみ/雨傘
 
たとき、裏庭から声だけお聞きしたのですよ。よかった、思ったとおりやさしそうな人で。わたしも安心しました。」

そう言いながら、男性は四角い風呂敷包みを差し出した。わたしが両手を出して受け取ると、驚くほど軽かった。男性は深々とお辞儀をし、結び目はゆっくりと開けてくださいね。と言い残し、雨に濡れながら帰っていった。その後ろ姿には白いふさふさとした尻尾が満足そうに揺れていた。

ドアを閉めると涼やかな風がひとひら走り抜けた。わたしは風呂敷包みを膝に置き言われたとおりに結び目を解いた。絹のような布は掌をさらりと滑り落ち、その瞬間こうばしい匂いとやわらかな光が部屋中にひろがった。

―干したての布団にもぐりこんだときのぬくもり、
草の上をはだしで駆け回った感覚…

湧き上がるイメージに堪えきれず目を閉じた。

ゆっくりと目を開けたとき、窓ガラスには水滴がきらきらと光っていた。

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