ひだまりつつみ/雨傘
 
―今日のうちに降るだけ降ってしまえばいいのよ―

受話器の向こうで母が言った。相槌を打ちながら片手でガラス戸を開け、グレーの空を仰いだ。激しくはないが単調に降り続いている。家族内での大きな行事はなんとなく居心地が悪い。改まるのも気恥ずかしい。受話器を置くことができず、庇から落ちる水滴を数えていた。

玄関先でチャイムが鳴った。明日の時間の念押をし、急いで電話を切った。ドアを開けると白い服を着た初老の男性が立っている。
「はじめまして、あなたにどうしてもお会いしたくて」
男性は彼の親類だと名乗った。明日の式には、訳あって出席できないので足を運んだのだという。
「以前、あなたがいらしたと
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