三千世界の彼方/雨霧
 
そうだよ」
 ――雪ィ? また若旦那は勉学のお話かい。難しい話は嫌いだよ、俺は。
「ハハハ、難しい話ではないのだけども。まあでも、お前の頭なら何でも難しいのかねぇ」
 ――そりゃあそうだ、若旦那とは頭の大きさからして違うからなぁ。
 ほっほ、っほ、っと。
 蒲公英の爺は笑う。
「しかもねぇ、その雪に、植物は潰されて、見えなくなってしまうのだそうな」
 ――おお、そりゃあ怖いのだねぇ。此処になくて、良かったってもんだい。
「そうだよ。此処が暖かくて、良かったんでさ……」

 ほっほ、っほ、
 ほっほ、っほ、
 ほっほ、っほ、っほ、っほっほっほ、
 蒲公英の爺は笑う。

「全く、今日も平和なことだねぇ」
 ――そりゃそうさぁ。何も起こりゃあしねぇよ。

 ほっほ、っほ、
 ほっほ、っほ、
 ほっほ、っほ、っほ、っほっほっほ、

 蒲公英の、爺は笑う。
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