三千世界の彼方/雨霧
外へ出ると一面白の雪の世界――、そんな所へ行きたいものだ。
戸を開くとその願いをあざ笑うように、暖かい風が吹き付けてきた。さんさん光る日の下で、蒲公英がのほほんと日向ぼっこをしている。
――おお、起きなすったね若旦那。夢の世界は良かったですかい。
「ああ良かったよ。お前の莫迦面を見ると、その気持ちも冷めてしまったがねぇ」
――そりゃあ残念なことで。
ほっほ、っほ、っと。
蒲公英の爺は笑う。
雪景色の夢を見ていた自分のことさえ莫迦らしくなって、私は苦笑いをする。
「ああそうだ、知っているかい蒲公英よ」
――何でぃ、若旦那。
「北の国ではねぇ、雪というものが降るそう
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