あぶく/松本 涼
 
渇いた瞼に浮かび上がる人影
昇り損ねた月が沈む辺りで

ひと滴の涙も見当たらない

ノックの響かない扉の向こう
風の通らない廊下で

お皿に並べた低音のハミング

半透明が重なる花びらの中心
虚ろな夢へと繋がる入口で

見惚れるのは枯葉のシャッセ

行き止まりには小さなスイッチ
野良猫と顔を見合わせて

チョークで囲むとパチンと消えた
あぶくの世界
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