みかん/乱太郎
みかんの皮をむくと
いくつかのいのちが並んでいる
土にまけば
また
みかんといういのちが
生まれていたにちがいない
くやしがっているだろうか
人の手が汚いと
叫んでいるだろうか
人の唾液は汚いと
怒っているだろうか
人の世界に土はないと
みかんが見ているもの
人には見えない
みかんが話していること
人には聞こえない
みかんが好きなもの
人には分からない
繋がれることのない間柄
遠い恒星のように
今
テーブルの上で
最後の光を放って
みかんをいただこう
たまたまここに居合わせた
みかんの甘い汁を
僕のいのちを繋げるため
土に還るまで
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