樹木の日々/千波 一也
 


いつからか
従えずにはいられないような
ある種の隷属のなかで
炎をおぼえた


つめたい石を蹴飛ばしながら
無言の
雨に

含まれ、ながらえ、



水たちの森は
鏡をとおり吸いあげられて
知らないことばが
よみがえる


いくつもこぼれた過ちを
ついばむ小鳥の
一羽となって

灯り、
ほのかに

まがいもの、かも知れない
朝がくる



根を張る禁忌に
背かれ続けているような
樹木の日々を
束ねては

畏怖のかたちに冴えていた



燃されず火を散る
葉脈として






戻る   Point(5)