抽象世界の散文小説/相良ゆう
 
すれ違いは心から生まれたのだろうか

どんな言葉を搾り出しても空気の失くなった部屋にはもはや何の感動も訪れない

心の代弁者は真空に放り出され無惨にも四散した
まるで宇宙空間に生身で投げ出された飛行士だ
その成れの果てはなんと残虐なものだろう
なのにそれはある意味では清々しくさえある
そう解釈することでしか惨めさを和らげることができそうになかった


伝えるものが欲しかった
空気がなくても伝わるなにかが必要だったと今では思う
言葉に頼りすぎていたのに今もまた言葉をしっかり抱きしめている
本当に抱きしめたいものは他にあるのに


なぜ物語が結末を求めるのか疑問に思っ
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