happy birthday/凛々椿
僕は生きているはずがない。
だけど、
いつもの朝焼けの色が、僕の心を負かすから。
生きているのかもしれない。
閉じた瞼に、浴びられるだけの赤を浴びる。
太陽からは血の匂いがする。
僕は空想に夢中になる。
今、僕の周りにたむろする朝帰りの、
若者たちの無数の体を、
屠れ。
引き千切るんだ。
そして瞼を開くと、誰も、
いない。
ゆるりと歩き出す僕の、
右足は、欲だらけの赤子を蹴飛ばした、右足。
僕の左足は小さい頃に、
路上でひなたぼっこのカマキリを踏み潰した、
左足。
歩きながら僕は、傷だらけの右手を陽光に透かして、
ひとつ思い出したのは、
この人差し指には蟻の亡霊が、
十数年も、
取り憑いているはずだということ。
君はずっと、
僕のそばにいた。
それで僕は、やっと泣けたんだ。
明日は、僕の誕生日。
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