海鳴り 何も特別ではない一日/いねむり猫
 
浅い眠りから醒めると
海鳴りが 体を満たしていた

分厚い波が海岸を打つ重い震え
また ゆるやかに 砂の眠りへ引きずり込む共鳴

海辺の午後 
見知らぬ世界に降り立った身軽さ
過去を投げ出してしまった甘い後悔

泳ぎ疲れた鼻の粘膜のはれぼったさ
熱を持った首筋 背中がやがて燃える予感

人声が絶えた海岸線
砂に頬を埋めて 砂の波紋の向こうに
押し寄せる海を見ている

海に侵略される孤島のあきらめ
波と風の音だけが 私の虚ろと共鳴する

肌に触れている 砂より滑らかな海ガラス
色鮮やかな珊瑚たち
どれも 干上がった潮溜まりのような心を
誘惑することはでき
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