音がいて、音が/Utakata
音
君の
右耳に
届いても
陰に笑って
しょうがなく
お話をつづける
窓硝子に張付いた
記憶が剥がれ落ちて
指で触るたびに融ける
傘を差して砂浜に立った
海にも雨が降ることを知り
世界の終わりを初めて願った
結末しか持たない物語の始まり
夜明け前の電信柱が微かに笑った
耳朶に空く嘘の象徴のようなピアス
渦を巻く器官の中に流れ込む昔の意識
金属の先端から雨の滴が膨らんで落ちた
唇から零れ出た瞬間に既に声は死んでいる
間隔が出来た瞬間全てが終わる様な気がして
どうしようもなく絶え間ない嘘を吐きつづけた
始まりがないものを永遠だと
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