てるてるぼうず/亜樹
ザアザアと雨が降つておりました。
ゴンと居間の時計が十参度鳴り響きます。
その家の主人は、ごろりと横になり、なにやら難しげな洋書を読むでもなく、つらつらと眺めておりました。
――今日はお出かけにならないのですか。
甲高い声がします。
――馬鹿を言へ。
本から目線を上げることなく、主人は言ひます。
それつきり、何を言ふでもありません。
ザアザアと雨が降つておりました。
あんまり長く降るものですから、なにやら次第に滅入つたやうな気分になります。
――おい。
今度は主人から声をかけます。
けれども、細君からの返事はありません。
――おい、聞こえないのか。
主人は読み
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