シンキンコーソク/大覚アキラ
 
朝の七時に電話が鳴るのは
たいていの場合
良い報せではない



受話器の向こう側で
母が

 お父さん、昨日の夜、シンキンコーソクで、


妙に軽やかな声で言った



シンキンコーソク
シンキンコーソク
シンキンコーソクって何だ



数十分の一秒の刹那に
ぼくの頭の中に最初に浮かんだのは

 信金光速

という文字で

ヒーローじみた姿に扮した父が
信用金庫に向かってすごい速さで飛んでいくという
映画のワンシーンのような映像だった



次に思い浮かんだのは

 thinkin'拘束

という文字で

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