川の流れる音/小川 葉
実家に帰ると
昔と変わらない
川が穏やかに流れている
このごろ父と母は
私の手首をつかんで
血が正常に流れているか確かめる
異常のないことを確認すると
母は血の滴るステーキを焼きはじめ
父は血のような色のワインを
私に飲ませようとする
その時私は理解する
この家の川は
穏やかと言うよりも
もはや涸れはじめていることを
窓を開ければ冬の川が
昔と変わらない景色で流れる
静かな音が聞こえる
そのことを父と母に話すと
その声は川より遥か
大きな流れに飲みこまれ
ステーキを食べてはワインを飲む
私一人の静かに流れる
血の音以外何も聞こえない
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