留守番の人/小川 葉
留守番の人が
玄関の扉を開けて
私は留守ですが
もしよろしかったら
と言うので
少しお邪魔することにした
壁にある
ご主人が描いた絵の話をして
ご主人は、と聞くと
留守ですの、と答えるので
それでは留守番のご主人は、と聞くと
亡くなりました
と言って俯いてしまった
それ以上は悪いので
ご主人以外の話をして
それでも長居するのも失礼と思い
おいとますることにした
そろそろ留守の妻が戻る頃だ
と思いながら、家に帰ると
さっきまで一緒だった
留守の奥さんが
私の家から出てきた
留守番の私に見送られて
私とすれ違う
留守の奥さんと会うのは
はじめてだったのに
首筋には私の
接吻の痕があった
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