恋歌/clef
のうえでころがしてあじわった。
わたしはあなたがつかう色や形のたよりなさがいとおしくて、とき
どきその色を真似してふざけた。調子にのったわたしは、あなたを
あなたのほんとうの名前でよんでしまった。とまどいをかくさなか
ったあなたにわたしは失望した。もうこの世のはてのはなしなどや
めようと。
せつなさの水は炎にやかれ、やかれることで息をふきかえしてしま
った。一度とけた雪は、ふたたび氷結し、だれかがその上をとおる
のをいじましく待っている。雪のうえで眠るしあわせをおもいだし
たあとで、それはやわらかくあたたかい枯れ草のことだったと落胆
した。あたたかな水、あたたかな水と唱えるうちに、おもいの葉を
うかべた湧水は、決壊した川のように、いちどきにどっとながれだ
した。
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