鰐君/kaori*
鰐君
君は
すれっからしのように唄っては
ひとり
夜の片隅で泣いてる
沼地の夜は
命を
育んで
君の仲間は身を寄せ合っている
闇の底で
嗚咽が響く
鰐君
君ひとり
人々の悲しみを一手に引き受け
夜空の
星を見ている
星たち
ざわざわと
あらぬことを交信中
イクトセイクトセイクトセ
と
世迷言を
繰り返す
鰐君
君は
尾っぽをぶんぶん振って
どこへ行っても
君の軌跡は消えやしない
鰐君
君の心臓の音は思いのほかかわいらしい
鰐君
接続詞「けれど」の使い方がおかしいよ
鰐君
会えなくなっても元気に生きよう
鰐君
もう泣くなよ
鰐君
今だけ言葉を忘れよう
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