かるいからだ/小川 葉
 
高層ビルが地中に沈むと
私は懐かしい朝を迎える
夕焼けのような朝日を浴びて
新しいはじまりを思う

一番高いビルの辺りから
植物が芽生えやがて木になる
まるで高層ビルのように
その下にはかつて暮らした
雑草の町並みがある

私はその中に自分の家を探す
すると私の家族にとてもよく似た
虫が夕食を食べている
私だけそこにいない

ふと空を見上げると
空は空ではなく雲は雲ではない
別な何かであることに気づく
私も私ではなく
からだもかるいことがわかる
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