彼等のためのソナタ(香りつき)/千月 話子
 
  「オルガン」

オレンジみたいな涙を流すから
いつも泣かされてばかりいた
優しいね
キミは唇を頬に寄せて
流れる柑橘涙を上手に受け止める

夏の子供用プールはレモンの匂いがするね
キミからは 桃の匂いがしたよ

ボク達は手を繋いで ゆらゆら浮かぶ
暖かいね 今日の空
太陽の日差しが背骨を伸ばす
 充満した果汁が手の平から零れ落ちた

キミの目が きらきらして
ボクの柑橘を掬い取る
世界一甘酸っぱい水しぶき

独り占めして 独り占めしてさ
キミ一人だけ綺麗になっていく



 「フルート」

校庭の隅にある藤棚は
塗り替えられて 真っ白

[次のページ]
戻る   Point(7)