進化の子供たちは/Utakata
その日
太陽が沈む頃
魚だった僕たちは陸に上がる
波に運ばれる格好で
砂浜に打ち上げられた僕らの姿は酷く無様で でも
既に閉じた鰓の代わりに
僕たちは出来たばかりの肺を必死で動かす
最初の呼吸は酷く苦しかったが そのかわり
肺からの風が空気を振るわせられることを僕たちは知る
長かった
酷く長い間 僕たちは待った
この瞬間
鰭ではなく脚で大地に立つ瞬間を
五億年のあいだ
見上げた夜空は
水中からよりもずっと鮮明で
赤みの掛かった巨大な月がそこに浮いていた
潮が満ちてゆく
僕たちの身体が細かに粟立つ
僕
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