足りないもの/
小川 葉
ていった
その先に
工場のような建物がある
たぶん足りないものは
そこで作られているのだろう
おじいさんが
泣きながら下校してくる
ランドセルが空っぽだったことに
気づいたからだ
同じ理由で
お父さんとお母さんも
昔みたいに笑って帰ってくる
家族が家族になって
ひさしぶりに夕食を食べる
僕はもう大人になっていて
妻と二人で食べている
あの日足りていたものが
今はもうすっかり
足りなくなってしまった
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