かなしみ/soft_machine
 

寝たきりの祖母が一週間の大半を
天井を見て過ごすことがかなしい
私の顔も忘れた瞳が
時にきれぎれの記憶を思い出す
その輝きが
新しく覚えることがらを無くしても
ふと寂しさを宿して見えることが哀しい

とぼとぼと曲がりくねった帰り道
空がかなしかった
季節がかなしかった
染み入る色が哀しくて
女は胸の痛みを堪えて歩く
その背中に人生を読み取れたとしても
ことばにした瞬間から
なんだかとても安っぽいものに思える
それでも今日も哀しみはやってきた
テーブルに積み重なったグラスが哀しい
歪んだ窓に映された電線の向こうの雲が哀しい
壁越しに流れくる隣のファドが哀しい
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