雪について/龍二
雪に覆われるはずだったアスファルトは、まだ鈍い色をしてその姿を晒していた。街灯の無い場所、足跡のつかない硬い道、蛍光色の表示、スパンコールをぽつぽつと置いた様な都会の夜空。
深く呼吸をする度に、胸のあたりを乾いた冷たさが襲い、呼吸の仕方を度忘れしたのか、少し息苦しくなった。信号の光、街灯の光、人々の生活の灯火、川面に反射する星のわずかな光、それらを覆い、何も見えなくする雪はとうとう降らなかった。
音も無く、徐々に温度と神経を奪い去っていく寒さだけを与えられた。抑揚も、感情も無い、記号の様な寒さだと思った。
手の甲を走る青い静脈、寒さの余り拳骨を覆う赤らみを庇って、ポケットに手を入れた。空の嘘を責めようとは思わない。
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