沈黙の内側、ダイヤグラムは途切れたものばかりで体裁を整えている(6・完結)/ホロウ・シカエルボク
ていた」のか?俺はしばらく奴のことをただ哀れに感じていただけだったが、一歩踏み出して両腕を広げ、奴の身体をゆっくりと抱いた。
「すまなかった。」
俺の腕の中で腐臭は子供の様にしゃくりあげた。消えるんだ、消えてしまうんだ…か細い声で何度かそう言った。俺は奴の頭をぽんぽんと叩いてやった。しばらくそうしていると奴は泣き止んだ、そして臨終のときのような深い呼吸をし―
実体は消え、奴はほんのちょっと具現化されたイメージの様なものになった。両の眼は俺を見ていた。相変わらず無表情だったが、もうそこに暗い色は無かった。そして、テレビのチャンネルが切り替わるみたいにふっと消えた。かすかな感触すらそこには残らなかった。ああ、と俺は思った。
成就とは、この世で最も哀しい出来事の中のひとつなのだ。
【完】
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