逆イマジン/小川 葉
 
外国に行きたくて
海を歩き続けた
それなのに
海はどこまで行っても
海のままだった

道に迷わないように
紙幣をまき続けた
それも尽き果てる頃
家に帰ろうとして
鞄から地図を取り出した

それは全く役に立たない

通りすがりの老人が言った
背中にやわらかい戦争の匂いをさせて

それはとても古い地図だ

老人に渡された
陸地のない地図を見た

国境どころか
地名さえ印されてない
内側も外側もなく
海が海のまま
あるがままに広がっている
そこはまるで
新しい戦前のようだった
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