雨が歌う/凛々椿
 

くらくらゆれる視界のすみっこで
かみなりが光る
くらやみがやわらぐ
やさしい雨のにおいがする

失いかけてる聴覚のすみっこで
ちりちりと雨の音は跳ねて
どこにもいけない
かなしい雨の音がする

死ぬことを知らないだなんて
まるで死んでるみたい
母のぬくもりを知らないから
雨はくりかえし歌う

僕の名前で
君を呼んでごらん
君の名前で
僕を呼んでごらん

帰る場所を知らないだなんて
まるでわたしたちみたい
いのちの音が
ぺこりと一礼する

生きてる時に気づけばよかった
あまぐもがあおぞらのじゃまをする
かみなりがあおぞらの口をふさぐ
まるで私たちみたいだ

早くめざめすぎた花たちの悲鳴が
私たちにはもう届かない
本当のかなしみは
私たちには もう分からない

月のない海は
けっして闇にはなりきれない
ちっぽけのくりかえし
雨が歌うよ



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