黒い羽/純太
 
雨があいにくと決めているのは
晴天が洗濯日和と決めているのは
なぜだろうと思う人々が歩いてく
そして自分を篩にかけるよう

道中、好みの黒い羽を見つけた人々だけ
どこかの砂浜に立ち止まり小さな砂の城を
いくつも作り続けていた

細かい造形は見つけた黒い羽で

人々は城を入念に完成させたあとで
陽や雨や風や波が城を傷つけても
補修することはない
補修しない替わりに
風や波が生まれ去っていく時間と
同じ時間をかけて黒い羽の手入れをしていた

人に見られては困るようで
皆、背で隠しながら手入れを


それからずっと黒い羽を維持できていた人々はもっと緻密な城を作っていた
空に縦と横の幅を決め映し思考
その値に砂上で時間を掛けて演算をし
そして答を城の設計図に

黒い羽は舞う

縦横のない宇宙から脱出できず
その中で生まれ育っているその人々は
自分が宇宙の分身であることを知らずに今日も城を作る
見つけた心地いい黒い羽で
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