杖/城之崎二手次郎
 
 杖をついたおじいさんが、僕の前をゆっくりと歩いていた。追い抜こうかと様子をうかがっていると、前からだらしない格好の若者が三人歩いてきた。彼らは狭い歩道を横に並んだまま、無理やりすれ違った。瞬間、何かが光った。おじいさんは両手で杖を抱いていた。手を差し出すと、心配なのは連中のほうだよと言って歩き出した。騒がしさに振り返ると、さっきの三人が手を押さえてわめいていた。その足元に指が三本転がっていた。

あとがき。
二〇〇字物語第二十弾。
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