07:36/凛々椿
この寒空の下では
頁を手繰る指も冷たかろう
頭の中で誰かが囁いた
ビジネス文書術 という本の
最終章
まもなく通勤特急が通過します
黄色い線の内側へお下がりください
危険を告げる音午前7時36分
北風
127頁目に挟んであった栞が
はらはら
と線路に滑り込む
それは 目印とのお別れ
特急列車がホームを揺らし
青いラインの帯をたなびかせて視界をからかい
栞はいなくなった
電車はカーブを曲がりゆるゆると地下へ
北風
7時39分
僕の終わりと僕の始まり
7時40分
きびすを返し
改札をくぐると人身事故のアナウンスが
けたたましく晴天に鳴いた
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