夜の始まり/
川口 掌
ちる涙の雫に似た
消えていく思い出
持ち主から離れ
今尚叫び続ける孤独
あの坂を下った所
九月頃から
その親子は住んでいた
悲しみを伝え泣く
赤児の声に母は負ける
繰り返し通う父の背を
二人いつしか忘れ
夜明けを前に遠ざかる
斬り捨てられた月の
上半身に重ねられる
過去と言う景色
吐き出された想いが
次第に辺りに溶けていき
静かに街は暗闇に包まれていく
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