oink oink/紀ノ川つかさ
朝の電車につめ込まれ
私達豚は
割と可愛らしく鳴きます
oink oink
たまの夏日
節電のために抑えられた冷房
蒸気の飛び交う車内
暑苦しくスーツを着込んだ私達は
それでもせいいっぱい
可愛らしく鳴くのです
oink oink
勝ち組と負け組に
くっきり分けようとする世の中では
せめて可愛らしく
生きて
似合わずとも
可愛らしく
生きて
その非情さを忘れるしかない
oink oink
oink oink
ぶうぶうとは鳴きたくない
oink oink
ぴいぴいとは鳴きたくない
この車両が檻に見えても
仕出し弁当が餌に見えても
自分の体にほどよく脂が乗って
「食べごろ」であっても
空を見上げ
可愛らしく鳴くのです
oink oink
真上よりもう少し
太陽が傾いているようです
もう午後ですね
戻る 編 削 Point(2)