一心異体/木屋 亞万
 
君と僕とが向かい合って手を繋いで
綺麗な楕円を作る時に
手の中には2人だけの空間ができる
実体同士では合体できない僕らの
空気を媒介にした融合
でも1日3回の食事の度に
手を取り合っては見つめあっていると
少し疲れてくる
合体は夜だけにしようか
なんて唇を接続したこともないのに
君の端子から僕の端子へ
どのような電流が流れるのだろう
食後のコーヒーを分け合い飲み終え
2人がけのソファに座る
今度は横向きにぴったりと
よく飽きないねと言われるくらいに引っ付いて
昼下がりのサスペンスを見るのだ
角の取れた長方形の中でも
やはり僕らは実体以外を融合させる
木曜に見る火曜サスペンス劇場の
違和感を話しながら
2人がけのソファがひとつであることと
君のつむじが2つもあることに
安心感を抱きながら
僕らは同じ午後を過ごす
同じ部屋で同じ空気を吸い同じ物を食べて同じ物を飲んで同じテレビを見る
だけど僕らは絶対に同じではない

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