「dialogue」/菊尾
 
角度の違うひし形 
幾つも重なって 
生まれた幾何学模様 
誰かが描いた 
そんな僕達の角度 
歩み寄る君の半身 
造りこまれた唇は余分には話さない 
肌の隙間を埋めていく 
朝が戻ってくるけど 
それまでは他人じゃない 
慣れてしまうのが怖いから 
二人は話し足りないぐらいで引き上げる 
「別れ際の余韻は残しておきたい」と 
いつかの君は言っていた 
縁石の上を這う小さな葬列 
通り過ぎる乗り物には人が乗っている 
電線に停まる影色の鳥 
意思を無視してどこまで行けるだろう 
躊躇無く手離していく君は左右されることなく 
けれど右も左も 
もう分からないのだろう 
彼女は「ただ、」 
その後に続く言葉を欲しがった 
僕は「だけ。」と 
言った最後に付け加えた 
戻る 編 削 Point(0)