「同行」/菊尾
 
話せるうちに話すから 
それに相槌でも聞き耳でも 
感覚が一つでも向いていたらそれでいい 
このままはお預けで 
ここからは 
行方不明者が集まる森で落ち合おう 
額を触ったら爪が刺さる感じ 
額を突かれたら頭蓋に響く軽い音 
君は飛んだり跳ねたり楽しそう 
僕は低い声で呟くように古い歌を口ずさむ 
あまりそっちへは行かないほうがいいよ 
幼い時 
眠る前に聞いた不思議の国に入り込むから 
それでも片方の靴だけを残して行くのなら 
僕も後からついて行くよ 
「前にもした話をまた話そうよ今度は違う角度で」 
「都合のいい事を幸せと呼んでいるだけ」 
「知っているフリが上手で知らないフリが下手なのよ」 
シャボン玉と一緒に空へ浮かんで割れたのは 
君が今言った言葉達 
僕らはこの先も正体不明で行方不明 
誰にも探せない見つけ出せない 
背中を押すことも手を引くことも出来るよ 
戻れなくていいのなら 
いつだって 
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