雨の中のサイレントツアー/一ノ瀬凛
ほらドアを閉めれば一人きり
ステレオはオフにして
雨がフロントガラスを弾く
時折タイヤが水溜りを踏みつける
音しか聞こえない
オレンジを灯す街灯が続く限り
どこまでも走って行けそう
今に執着しない潔さとか
夜明けを怖がらないこととか
ひたすら考える
もどかしさの波に飲まれまいと
踏み込んだアクセルが戻せない
無意識に何度も軌道修正をしようと
ステアリングを切り込む手がとまらない
アスファルトの道は
はっきりとそこにあるのに
どうして自分の道は見失ってしまうのだろう
激しく打ち付ける雨に
音は閉ざされ視界も滲む
雨のなかのサイレントツアー
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