焼き鳥1本/うめバア
 
台所の蛇口は少しゆるいのか
夜中にぽたぽたと音がする

間取り1K、家賃6万5千円のアパートの
玄関をキミがあける

コンビニで買った焼き鳥と
缶ビールを手に持って
外階段をトントンと上って

そこからこの部屋が
うすぼんやりだけど
明るくなる

去年のままのカレンダーが
変わらぬ微笑みをくれる

ほこりだらけの貯金箱が
もっと欲しいと訴える

とっくに中身のなくなった固形消臭剤が
ふてくされて突っ立って

10年も放り出されているカーテンが
さわっと優しい歌を奏でる

つまらない壁のしみまでが
何か、言葉を言おうとしてとまどう

たくさん、たくさんの
孤独で絶望的な夜の末に
そんな時が続いていたことを
知らなかったよ

知らなくて
本当に
よかったよ






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