Tao /服部 剛
 
ペンキの剥げた 
「幸福の青いベンチ」に腰かけ 
いつまでも手の届かぬ恋の花や 
身を粉にしても報われぬ仕事の 
やるせなさを思う 
誰の手もふれられない 
こころのうつむきに 
寄り添う 風ノ人 のみが 
いつも そっと 傍らにいる 
思い出すのは 
いつか訪ねた古の都 
鳥居をくぐり 
遠い境内の暗闇に火の灯る 
夜の法隆寺へと続く 
長い松並木の道 
言葉も無く佇んでいたぼくに 
旅路の空の何処(いずこ)から語りかけた
「未完成」のほの哀しい旋律 
( 旅人よ 
( 地を覆う柔らかな 
( 松の枯葉を踏み拉(しだ)き 
( 目の前の闇を貫く 
( ひとすじの光の道を 
( 流星となって往くがいい 
傍らに吹く風が 
ぼくの猫背を 
少し押した 
 
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