優しい人がいるのは優しくない人がいるから/零椅
回転するように反転して逆さから君は言った
「なんでやらないの」、と
「真面目になるのがそんなに恥ずかしいのか」、と
「下ばかり向いてちゃ前が見えないよ」、と
そればかりはごめん いくら君の問いかけでも
私には納得できるだけの答えが用意できないんだ
例えば海中を蝋燭で照らすことができないように、夢ばかりみている羊が空を飛べるとは限らないように、土の中に埋まった死体が助けを呼べないように、深夜に映る砂嵐を取り出すことのできないように、本の中に吸い込まれた少女が話の大筋を変えることを厭わないように、鏡の中の自分が笑えないように、できないんだ
いつも夢ばかりをみてきたけれど
現実に生きていないわけではない
平行した二つの世界の間を彷徨っている
足下だけをみて障害物に注意をはらってぶつからないように耳をそばだてて
嘘と冗談で固めて壊れないように層を重ねて必死に生きてきた
答えが出たら私の世界は否定される
世界は一つでも欠ければ均衡が崩れてしまう
だから、ごめん
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