破線/大覚アキラ
 
花火は撃ち尽くされ
Bボタンを連打する音は
いつのまにか止んでいる

ネアンデルタール人は
音のない闇の中を
火のついた棒切れを
高くかざしながら歩いていく

遠ざかるほどに
光は点になり
闇に溺れそうな
はかなげな破線を描く

ネアンデルタール人の姿は
もはやどこにも見えない
破線だけが
はかなく闇に浮かんでいる

磨きあげられた石器の
黒く光る切っ先を
破線に沿ってなぞる

新鮮な肉を切り開く感触と
温かい血の匂い

まっさかさまに
太陽が
地平線から
空に滴り落ちていく

せつない

せつない朝だね
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