まなざし、不可知、忘却/ケンディ
雲ひとつない産業的な快晴だ。
その空に向かってタバコの煙を吐き出す。
炎症した気管支の血の味も心地よい悲劇性を放つ。
今日も工場の地響きをバックグラウンドにして、
レクイエムをこのまなざしで奏でたい。
まなざし。そういえば私の友達が死ぬ前に、
病院のベッドの上から私を熱心に眺めていた。
病的な、熱心なまなざしで、
「もし生まれ変わったら」を語り続けていた。
ちょっとこの友人について話しておこう。
彼はすでに、脱-境界的な存在だった。
生と死の境界、
皮膚の外側と内側の境界、
彼と私の境界。
そして、現実と神話の境界。
それが崩れ去っていった。その
境界の脱落
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