屋上/龍二
扇情的な色彩の西日を背に塀の上を歩いて行く子供達の姿、木々に囲まれた小さな公園、冷たさを感じさせないジャングルジム、手にこびりついた錆を払い落とし、強い風に押されながら、見下ろした風景。
鎖骨の辺りで痙攣し、膨張して自らを押し潰そうとし続ける思い出を懐かしむ事は、何の意味があるのかと自嘲する。
呼吸を遮る物など、何も無い。歩き続ける道に、石一つ落ちていない。
それでも、一歩も動けないのは、子供の頃の自分が、袖をひいて泣いているからだ。
またここに来てしまったのは、学生服を着た自分が、ここから何かを見下ろしていたからだ。
工場から立ち上る煙、遮断機の声、激しく暴れる猜疑心、人工的な枯れ木。
ここで何を見つめていたのか今ではもう分からない。
忘れる為なのか、思い出す為なのか、それすらも、分からない。
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