sketches/鴫澤初音
 
 午後 誰もいない家の中を 醒めた眠りから引きずられて
 歩いている 春の匂いがした 北のベランダから薄い日の光が
 廊下を明るくして白い壁紙に黒い木のトリカテル
 


     
                        只今 帰りました

           
         去年、死んだ妹の春画を撮った
         春の散っていく最中 僕等は舐めあったあとの
         べたべたの身体を庭に埋めて 木の下で
         透ける花びら越しに空を、青かった空を見ていた
         あれは投げかけた永遠を取り返した日
       
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